月刊ココペリメールマガジン2015/8月号

こんにちは、株式会社ココペリインキュベートの安村です。
ココペリメールマガジンの第17回目をお届けいたします。
この記事ではバックオフィス業務にまつわるお話を毎月お届けさせていただきます。

今回は役員報酬の決定についてです。

「一度決定した役員報酬はその期はもう変更できない」くらいには
ご存知の方が多いかと思います。

おおむねその通りで、
役員報酬支給額を事業年度の途中で改定(増額・減額)した場合には
原則としてその一部が損金として認められません。
損金とは法人税額を計算するうえでの費用のことですので、
損金不算入の経費があると、法人税額が上がることになります。

ですから、法人税で損をしないように
通常は役員報酬の定時改定の要件を満たすように金額を改定し、
報酬の全額を損金算入できるようにします。

①期首から3カ月以内に行う改訂であること、
②事業年度内において、改定前の毎月の支給額が同額であり、かつ、
改定後の毎月の支給額が同額であること、
といった要件を満たせば、改定前・改定後の役員報酬はいずれも
全額損金算入できます。

また例外として、
会社の業績が著しく悪化した場合には
役員報酬を期中に引き下げることが認められます。

通常の定時改定を行うケースでの役員報酬の変更は、
3月決算の法人であれば、4月・5月・6月分のいずれかの月に株主総会を行い
そこで報酬の額を決定することになります。

実際には、決算の内容の承認のため
期末から2カ月以内に定時株主総会が開催されますので、
その場で役員報酬を決定していただくことが多いようですね。

定時株主総会で役員報酬を決める前提ですと、
3月決算の法人の場合であれば、5月中の定時株主総会で
役員報酬の額を決定し、5月支給分か又は6月支給分の役員報酬から
支給額を変更していただくことになります。

役員報酬決定の時期はこれでいいとして、
では、額面はどうやって決めればいいでしょうか。

株主がそのまま社長になっているような中小企業の場合に
おすすめしているのは、あらかじめ年間の利益を大まかに予想していただき、
それをほぼ相殺できる程度の役員報酬にしていただくことです。

上手くできた場合には、会社に純利益が残りませんので
法人税額を抑えることができますし、
会社で上げた利益を社長個人がそのまま受け取ることができます。

ただし、あまり役員報酬を上げてしまうと、法人税額は下がりますが
個人の収入にかかる所得税額や住民税額が上がりますし、
社会保険料も同じく上がってしまいますのでそちらの注意は必要です。
特に中小のオーナー企業の場合には
会社と社長個人とを合計で見て節税を考えることが大切になります。

会社の利益を社長に移すこのやり方は節税に重きを置いたやり方ですが、
これでは上手くいかない場合ももちろんあります。

例えばまったく真逆の考えで、
会社に利益を残して事業規模を拡大させていきたいような場合には
役員報酬は低めに設定して頂くことになります。
利益が増えるため法人税額は上がってしまいますが、
事業を拡大させる方向を目指すなら避けて通れないところですね。

また、利益を多く見せて銀行評価を上げたいような場合にも
同じく役員報酬は低くして頂いた方がいいことになります。

ごく大雑把に見ますと、
役員報酬の額を低くすれば、会社で出た利益を会社に貯めこむことになり、
反対に高くすれば、会社の利益を社長個人として受け取ることになります。

役員報酬を決めるに際し
節税を取るか、銀行評価を取るか、
個人資産を増やすか、会社に資産をためておくか、
その時々で判断の分かれる難しいところになりますね。
経理担当者や税理士さんと、よく相談していただければと思います。